自治体の財政状況は複雑ですが、大まかに「体力」を測るなら 実質単年度収支・財政調整基金残高・地方債の3つに注目すると分かりやすいです。特に、実質単年度収支と財政調整基金は表裏一体の関係にあり、この2つを切り離して見ると誤解を招きやすい指標です。
1. 実質単年度収支 今年の家計簿の黒字・赤字
実質単年度収支は、年度ごとの実質的な収支の結果を示します。
黒字であれば収支は健全、赤字であれば持続性に懸念が出ます。
ただし、この数字だけでは本当の財政状態は見えてきません。
2. 財政調整基金残高 貯金の厚み
財政調整基金は、収入減や災害など突発的な出費に備える「自治体の貯金箱」です。
残高が厚ければ安心ですが、薄ければ急なショックに対応できなくなります。
3. 実質単年度収支と基金の関係 プラスとマイナスの裏側
実は、実質単年度収支は基金の動きに大きく影響を受けます。
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基金を取り崩す → 単年度収支はプラス方向に補正される
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基金に積み立てる → 単年度収支はマイナス方向に出やすい
つまり、基金を大きく取り崩せば収支は黒字に見えますが、それは“貯金を取り崩して帳尻を合わせただけ”であり、体力が増えたわけではありません。逆に収支が赤字に見えても、基金を積み増している場合は、将来の安定に備えた健全な動きとも言えます。
これらをわかりやすく、家計に置き換えて説明します。
たとえば、1月1日時点で財布の中身は0円、貯金が24万円あるとします。毎月の生活費は2万円ですが、収入は1万円しかなく、残りの1万円は貯金を取り崩して補っています。
その結果、12月31日時点で財布の残高は3,000円となりました。この場合、年間の収支は+3,000円です。
しかし実際には、1年間で貯金を12万円も取り崩しており、年初と比べて家計の総体力は12万円マイナスになっています。
自治体財政に当てはめれば、実質単年度収支はプラス3,000円、財政調整基金残高は12万円という状況です。つまり、単年度収支が黒字に見えても、実際には財源が大きく減っていることがご理解いただけると思います。
👉 このため、単年度収支と基金残高は必ずセットで見る必要があります。
4. 地方債 借金の重さ
地方債は大規模な公共投資のための借金ですが、返済負担は将来世代にのしかかります。
公債費比率が高まれば、自由に使えるお金は減り、事業の選択肢は制限されます。
5. 草加市の現状推移
以下の表は、草加市における直近の数値の推移です。
もちろん財政を評価する際には、いわゆる毎年の「やりくり」や、各種交付金の動向など、多くの要素を踏まえる必要があります。
ただ、これらの指標だけを切り取ってみると、草加市の財政的な体力は直近では削られている状況が見て取れます。
(令和6年度の数字は審議前ではありますが、令和6年度の決算書より抜粋してます。)
まとめ 3つの視点で「体力」をつかむ
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実質単年度収支が黒字か赤字か。連続してのマイナスはNGです!
(補足:自治体の収支は、本来プラスでもマイナスでもなく「±0」が理想とされます。税金を余らせすぎず、また使いすぎもしない ― 適切に使い切ることが求められるためです。その観点から言えば、年度ごとに収支がプラスやマイナスに振れる程度であれば、まだ許容範囲と考えられます。) -
基金の残高がどの程度か
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借金の返済負担が重くないか
この3つをシンプルに押さえるだけでも、自治体の財政の方向性を大まかに理解することができます。
特に「収支と基金の関係性」を見極めることが、健全性を判断するうえで欠かせません。